債務整理には、大きく分けて【任意整理・特定調停・個人民事再生・自己破産】の4つがあります。今回は、その中の個人民事再生について、特に抵当権との関係についてお話していきます。
個人民事再生と抵当権について
まず、個人民事再生と抵当権について簡単に説明しておきましょう。
・個人民事再生
個人民事再生は、任意整理や特定調停では解決を図れない人向けの債務整理です。
裁判所の決定により、原則として1/5まで借金が減額されます。そしてその減額された借金を原則3年間で返済することになります。住宅ローンを抱えている方は、住宅を手放すことなく手続ができる可能性があります。
・抵当権
抵当権は住宅ローンなどの借入をした際に、不動産を担保として取得しておくために設定するものです。住宅ローンの支払いができなくなり、当該不動産が売却されたときに、その売却代金から他の債権者に優先して弁済が受けられる権利があります。また、抵当権を設定しておけば、競売申立の前提として訴訟をする必要がありません。
抵当権がついたまま個人民事再生はできる?
個人民事再生手続において住宅資金特別条項を定めることができ、これを定めた場合、住宅が競売にかけられたりすることなく、居住し続けたまま住宅ローンを継続して支払っていくことができます。つまり抵当権があっても個人民事再生はできるということです。
「住宅資金特別条項を付す場合の条件」
住宅資金特別条項によって、住宅を失わずに大幅に債務を減額できることが個人民事再生の最大のポイントですが、どんな場合にでも適用できるわけではありません。住宅資金特別条項を利用できない場合をいくつか挙げてみます。
①抵当権が担保する債務につき住宅購入資金以外のものが含まれている
例えば、住み替えをした場合に、前住居のローン残を合算して借り入れた場合や車などを購入する資金などが含まれている場合です。諸費用ローンが含まれている場合もこれらと同様ですが、諸費用の内容や金額によっては住宅資金特別条項を利用できる場合もあります。
②住宅ローン以外の抵当権が設定されている
住宅ローン以外の債務を担保するための抵当権や根抵当権が設定されている場合、住宅資金特別条項は利用できません。
③当該住居に債務者自身が居住していない
投資用マンションや店舗で、債務者自身が居住していない物件は居住用とは言えず、たとえ住宅ローンとして借入をおこなっていても住宅資金特別条項は利用できません。
まとめ
個人民事再生は大きな恩恵を享受できる手続ですが、それゆえに要件がたくさん定められており複雑なものとなっています。専門家でも判断材料となる書類が、ある一定程度揃っていない状況では住宅資金特別条項を利用できるのか、個人民事再生手続が本当に債務者自身に適した手続なのかを判断するのは困難なのです。個人民事再生手続を含む債務整理手続については、まず専門家に相談することからはじめましょう。